税金ほか

「特別償却」or「税額控除」

 

設備投資などを行うと、その内容によっては優遇を受けられる場合があります。

そして、その優遇措置は「特別償却」か「税額控除」どちらかを選択できるというものも多いです。

どちらを選べばいいか悩む、若しくはわからないということもあろうかと思います。

 

本日は、特別償却と税額控除のどちらかを選択適用できる対象資産の設備投資を行ったという前提で、それぞれの内容について簡単に説明し、結局どちらを選んだ方がいいのか確認してみたいと思います。

 

 

特別償却

特別償却とは、一般的に通常の減価償却とは別枠で、一定の割合を乗じた償却額を認めるというものです。

翌期以降の償却額を先取りすることができるということですね。

あくまで先取りなので、経費にできる総額は変わりません。

「課税の繰延べ」と言ったりしますが、本来当期に払うべきだった税金を翌期以降に回しているイメージですね(翌期以降の償却費が減る=利益が増える)。

 

税額控除

税額控除とは、取得価額に一定割合を乗じた額を、納めるべき税額から差し引くことができるというものです(税額の20%までなど上限があります)。

特別償却は課税の繰延べとなりますが、税額控除については、ダイレクトに税額を減らし、減価償却は通常通り実施できるので、いわゆる「節税」となります。

 

基本的には税額控除

なので、基本的には「税額控除」を選ぶほうが有利ということになります。

ただし、一定のケースでは、特別償却を選択した方がいい、または税額控除を選んでも意味がない、あるいはどっちも選択しない(できない)ということもあったりします(決算書に反映させない方法もあったりしますがここでは割愛します)。

例えば、目先の税額をとにかく減らしたいというケースなど。

設備投資の金額や特別償却の償却率によっては、当期の税額を圧縮することができるので、資金繰りに大きく影響します。資金繰りが厳しい場合など、税額控除よりも特別償却によるインパクトを求めることもあるかもしれません。

また、税額控除は税額の20%などの上限が設定されているので、そもそも税額が発生していないケースでは、税額控除できる金額がありません。

当期控除できなくても、翌期まで繰越できるもの多いので、2期連続で税額が発生しないと見込まれる場合には、税額控除は選んでも意味がないことになりますね。

 

前述のとおり、これら以外の場合は、基本的に「税額控除」を選択したほうが有利になることがほとんどです。

とはいえ、経営環境も様々なので、どちらが自社にとってお得なのか、判断が難しい場合もあります。
判断に迷う場合は、会社の状況等を踏まえ、顧問税理士と打ち合わせの上決めていただければと思います。

 


■編集後記
昨日は午後から面談1件。
それ以外は確定申告などを粛々と。

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  • この記事を書いた人

平川吉輝

税理士、AFP
1979年8月13日生、45歳。
長崎県長崎市在住。
2021年2月1日から日々更新中。

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